映画「2001年宇宙の旅」の主役的存在だったHALから50年以上、そしてコンピューターおばあちゃんの時代から、40年たった今、小学校でも必修化されたプログラミング
協力という意味の“cooperation”からとった「co」
音からとった「oto」
ドイツ語の音「ton」
これを組み合わせた「coton」という名で、プログラミングを通した様々な音楽表現をしている人達がいます。
そのメンバーである濵野 峻行さん、森本 洋太さん、宮本 貴史さんをお招きし、今回は「コトン!」と、はずみがついた感じでSOUNDABOUTしていきます。
ゲスト:濵野 峻行、森本 洋太、宮本 貴史
ファシリテーター:CD HATA
技術責任者である濵野 峻行さん、オランダ在住のチーフエンジニア森本 洋太さん、洋太さんと濵野さんの大学の後輩でコンピュータ音楽などを専攻していた宮本 貴史さん
偶然にも国立音大出身の人が揃った株式会社cotonのメンバー
- 濵野 : 小学校のパソコン室に、NECのPC98っていうシリーズのパソコンがあったんですよ。それをドキドキしながら毎回使ってた覚えがあって、いま小学校で必修になっているScratchのご先祖様みたいなLogoという言語が当時あって、自分でプログラムを動かしていました。
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- 森本 : 僕はブラジルで生まれてるのでブラジルに10歳までいて、その頃は外で遊びまわっていましたね。サッカーを三浦カズのお父さんらしき人に習ってましたよ(笑)
父がBASICで趣味のプログラミングやってるのを見かけたことがあり「これがBASICで」とか言われたのをなんとなく覚えてます。
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興味を持ったのは高校からですね。Maxとかがみんな使えるようになって、NATOとかあったじゃないですか。Jitterじゃないやつ。ハッカーっぽいインターネットカルチャーみたいなのがあってかっこいいなと思って。しかもわかんないんです、NATO作ったのが誰なのかって。女性らしいんですけど、複数でもあるんだけど1人のシンギュラーな名前でも通ってて、みたいな。僕の頃はMax/MSPになってて。音も作れるよってくらいになったから結構 glitchとかエレクトロニカとか、そういうあたりの時代ですね。コンピュータのノイズみたいなのが作れるよってのが面白そうで。NATOは映像使えるだけじゃなくてやっぱりハッキング的なカルチャーもあったから。そういう美学的なところでもかっこいいなみたいな。
Dachambo CD HATAのMachine de Music コラム
Vol.74 Maxをなるべく最大限に
- 宮本 : プログラミング始めたのは大学入ってからですね。それまでは打ち込みのようなものをやったりとかはしてたんですけど、 プログラムは全然いじってない。だから初めて触った言語がMaxでした。音大に行こうと思ったの高2の年末で、1年しかないから、何にも間に合わないなって。一浪は覚悟しておいた方がいいよって言われて、受験がどんなもんかだけ知るために試しに受けてみたらってことで、推薦を受けたら通っちゃって。打ち込みで作った曲を提出してプレゼンしているだけなんで本当に全くプログラミングをやらずに、入って「おお!」ってやり始めたらめっちゃ面白かった。数学とか物理とか好きだったんで、プログラミングと相性が良かったんじゃないかな。
- CD HATA : 皆さん数学とか物理とか理系?
- 濵野 : 私は高校ずっと文系でした。数学とかは嫌いではなかったしパズル的なものを考えるのは昔から好きだったと思います。仕事として社会でプログラミングやってる人も、必ずしも理系の人ばっかりでもなくて文系にも相当数やってる人がいるので、最終的にはあんまり関係ないのかもしれない。もちろん数学の知識が生きてくる部分はたくさんあるんですけど、一応どんな人でもできるんじゃないかと。
- 宮本 : プログラミングの面白いところは、自分の予測を超えたものが作れるってのがいいなと。もしかしたらそれは自分が書いてるコードがうっかり間違った結果かもしれないし、意図して書いたコードからも意図してないものができたりとかする。例えば楽譜で自分で手で書くって言ったときに予想外のものを生むって難しいけど、プログラムに例えば一つランダムがあるだけでも自分の予測にないものを体験することができるというのは面白いなと。ビッグデータとかだと、何かの例えば価格の変動と、その国の風邪になる人数のグラフが相関性があるとかいうのを、要は風が吹けば桶屋が儲かるみたいな、よくわからない相関性みたいなのが見えたり、相関性が本当にあるのかどうかわからないけども、大きいデータがあるとそういうものが見えたり するっていうのは、人間がやってもすごくそれを見つけづらいものだけど、コンピュータだと見つかったりとか、手動でやって1万回やったらできるものっていうのは、そりゃ人間がやってもできないものってことなんじゃないかって気がします。
- 森本 : 単純に機械が言うことを聞いてくれるっていうのがなぜか気持ちいいんです。自分の思い通りに機械が動いたということだけでも単純に嬉しいんですよね、なぜか。そこが一番根本になってる気はするんです。
- 濵野 : 仕組みとして表現するっていうところが面白いんだと思うんですよ。それによってコンピュータが自分の身体を離れて、代わりになってくれるか。身代わりと言ったらあれですけど分身みたいなもんですよね。自分の考えを自分の代わりに表現してくれるってのが。ちょっとまどろっこしい表現方法ではあるけど、仕組みを通じて物事を表現するみたいな。でそこに自分の経験とか考えとかも実は反映されてる部分がある。
- CD HATA : 経験とか、自分らしさみたいのって、やっぱり反映されるものなんですか。
- 濵野 : 自動作曲の話に繋がってくるんですけど、曲を作るときって五線譜に何か書いたりとか、出てくる音をイメージしながらシーケンサーのソフトとかで音符を置いてみたりとかするわけですけど、自動作曲とか、コンピュータ音楽は、音符ができる仕組みを作るんです。プログラムで、音楽そのものを作るっていうより、音楽が作られる仕組みを作る。それをプログラムとして動かすっていうことなんですよね。プログラムを作るときにもちろん数学的なものに基づいて作るわけですけど、ただ作曲ってやっぱりある程度作る人の意図とか経験とかを反映する部分がある。そういうものをプログラムとして書くってことも可能だったりする。その人なりの自動作曲のプログラムとか作ってみると、その人のオリジナリティが出てくる音にも感じられる部分があって。出てくる作品としての結果も違いはあると思いますし、プログラム自体も人によって実は癖が出てきたりする。コードを見てこれは誰々のコードだ、みたいな。
- 森本 : 下手したら分かるよね、うちら。
- 濵野 : soundtopeっていうのは、私達のcotonで作ってるソリューションで、これはさっき言った、音楽を、プログラミングとかプログラムによって作るっていうのが核となる部分で。いわゆる今までの音楽の仕事と言いますと曲を作ることを依頼されて、実際に作曲を作曲家がして、それを録音したり編集をしたりして、納品するみたいなことだと思うんですけど。soundtopeはかなり違うステップをとるんですね。例えば音楽の素材、効果音、楽器の音とか、どんな音でも構わないけど音の素材があって、それをコンピュータのプログラムによってリアルタイムに組み合わせていく。コンピュータ自身が作曲を常に行っていくというプログラムを作って、いろんなシチュエーションに応じて作っていく、そういうシステムです。
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- CD HATA : どういった流れでできていったんですか?
- 濵野 : 元々は、とある企業のご依頼で、会社のオフィスで仕事の効率を高める音楽を作りたいという要望があって、既存のBGMとか使っても構わないんですけど、例えば一人一人の状態に合わせて、最適なものを提供するとか、職場の環境をその都度チェックして、それによって変わるとか、外の天気によって、気分も変わったりしますよね。それによって別の音楽を作るとか、要するにいろんな環境に応じて最適なものを選ぶってときに、コンピュータのプログラムの自動的にそういう判断をするっていうことができる性質があるので、そこが生かされてくる。
- CD HATA : soundtopeのプログラムには人のキャラクターって出てるものなんですか?
- 森本 : 宮本さんは一言でいうとハイパーです。それがもう出てます。音もキラキラしてる。音の置き方は別にハイパーじゃないですけど。マックスに行きたい派ですよね、ミニマルとマックスがあるんだったら。たくさんレイヤーが重なって結果静かになってるみたいなことはある。でもやっぱコンプレックスな方向に行く方向なのかな。宮本氏は。
- 宮本 : 静かなら静か、うるさいならうるさい、複雑なら複雑、っていう、ある状態を作るためにすごい洗練するみたいなことをするのは好きです。結果的にできるものが何かの状態にすごく極端に振り切ってるみたいなことになる。
- 濵野 : ハイパーという言い方がいいかわかんないですけどでもやっぱり何か一つしっかりこだわりを持って、そこへの集中力ですよね。 その結果を最終的にちゃんとまとまったものを作るっていうことで、これは私達皆売りにしていこうということではあるんですけど、トータルなデザインをして、まとめていく。だから単にエンジニアとしてプログラムを作りますとかいうことでもなくて、しっかり出し方というか、アウトプットの見せ方まで含めてトータルデザインをして、いろんな要望に答えますというところを、一つの軸にしていきたいなと。
- CD HATA : トータルっていうのは、何から何まで?
- 濵野 : 元々は音楽とか、音のいろんなテクノロジーを、より社会に役立てていこうというところでそこへそれぞれのメンバーの中にやっぱりいろんな想いってのはあったんですよ。音楽の仕事をいろいろやってはいるけれども、まだまだ社会でうまく使われてないとか活用されていないような部分があるだとか、新しいニーズが何かあるんじゃないかっていうのがそれぞれの中にモヤモヤっとあって、その中から新しいものを作れないかっていうのを常にディスカッションしながら探っているという状態です。
- 森本 : プログラミングができる人とか会社とか、人的なリソースももっと全然あって、 プログラムとしてはもっと完成されたものを作るとこはいくらでもあるわけですよ。だけどそういう方向性よりは、プログラムの音楽的な結果に対して私達が作家として責任を持つ。だから何でもできる、どんなときにも使える壊れないプログラムを作りますよっていう方向性ではなく。作品として完結してるような。プログラムであると同時に作品でもあるっていうような形で、私達の作品の品質を保証しながら作る方向を模索したい。
- CD HATA : やっぱり音楽のプログラミングなんで音楽的な作品の方向性だと思うんですが、 そもそも皆さんどんな音楽が好きなんですか?
- 森本 : 僕は一言で言ってドローンです。やたら長い音楽が好きなんです。別にドローンってずっとずっと「あー」とかって鳴ってるやつってだけじゃなくて、例えばテリーライリーでも、ぶっちゃけドローンなんですよ。ずっと同じことが続いてるけども、細かなバリエーションがある。テクノも僕にとってドローンなんですよ。ずっと同じじゃないですか。
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- CD HATA : あのリフレイン感?
- 森本 : リフレイン感っていうのかな、何の構造の変化もないみたいな意味でのドローン。ドローンの性質ってやっぱトランス的なとこじゃないですか。繰り返しが多すぎてっていうか変化が少なすぎてトランス状態に入っていく。そういうのがテクノにもあるじゃないですか。
- 宮本 : ボレロとかも?
- 森本 : そうボレロもドローンじゃん!そういう意味でドローンが好きです。
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- 宮本 : 僕はめちゃくちゃ雑食ですね。だいたい全部好きっちゃ好きです。
- 森本 : ジャズは?
- 宮本 : ジャズは中高時代がジャズ部でピアノだったんですよ。ビックバンドのピアノ。それでなんとなく雰囲気弾ける。だけどその前は普通にクラシックのピアノ習ってたり。大学入ったら電子音楽聞き始めて、大学の受験の間にめちゃくちゃクラシックを聞いたりとかして。いろんな曲をめっちゃ聞きまくってたから最終的に本当にめっちゃ雑食で。車でApple Music 流すときも「今日はイスラエルのポップスだけ」とか。
- CD HATA : めっちゃピンポイントだなぁ(笑)
- 宮本 : バリ島の王宮っぽいゆっくりのやつとか。変な謎のプレイリストみたいなのばっかり聞いてとかそういうのが好きです。これが極端に好きっていうのはないですけど、強いて言うなら個人的に作った曲みたいのが好きだな。自分がいいと思ったからやってますみたいな曲が好きだなって。何にも目的もなく、それがお金の糧になるとかでもなく、ただただ何か作らないと爆発しそうだから作りましたみたいな感じの曲とか、 いいなと思います。生きてる感じがするなと。
- 森本 : 極端な振れ幅もあるし、音楽のフィーリングみたいなものって確かにスタイルとかに関わらない根本的な音楽が持ってるエネルギーみたいなのはあるんだろうね。
- 濵野 : 私もたまに、宮本くんが言ってたような中東だとか、民族音楽とか面白いなと思って聞いたりしてて。そこの人たちにとっては常識なんだけど、我々が真似できない何かみたいな。音楽だけじゃなくて言語とかもそうで、海外の言語とかに関心があったりするんですけど、(現地の人々に)自然に染みついたものを見るのがすごく面白かったりします。
- CD HATA : 濵野さんはサイン波を聞いてるのが好きって聞いたことがあるような。昨日は、何キロのサイン波を聞いてて、みたいな。
- 森本 : それドローンじゃん(笑)
- CD HATA : ドローンよりも変化がないものですね(笑)
- 濵野 : それは、どっちかって言ったらエンジニアリング的な関心に基づくものかもしれないです。あるもの一つがすごい磨かれて綺麗になっているとか。そういうところに美しさを見出すみたいな言い方かも知れない。
- CD HATA : 個性みたいなものがやっぱりプログラミングでも出てるなとかって感じたりします?
- 宮本 : 僕は自分がつくってる自動作曲のプログラムとかは、めちゃめちゃ自分カラー強いだろうなと。小学館のときに作ったBGMと自動作曲のシステムは、従来の音楽の三要素、リズムとメロディーとハーモニーが、そもそもそれが違うんじゃないかって。ハーモニーとメロディーって、音が同時に鳴ってるか同時になってないかっていう話で、実はリズムとピッチが合わさった、そのものの二つの状態を言ってるだけなんじゃないか。だからそういう意味ではリズムとメロディ、ハーモニーっていうのは、厳密に言うと二つの要素があればよくて。それとリズムとピッチと音色が大事なんじゃないかな。同じ音とか同じメロディーでも音色が全然違えば全然違うものになる。それはもう明白だから、 そこをコントロールするための仕組み。逆に今メロディを出したいとか今ハーモニーを出したいっていうのが選べない仕組みを作った。あるときはメロディーとして出るし、あるときはハーモニーとして出る。そこはある程度確率的に操作されるけど自分で意図して決めることはできない。そのかわり音色とか音の密度感、トリガーの量とか、時間的な量とか、そういう部分にはパラメータを設けてやると、根本的に全然違う音楽っぽいものができるんですけど、それは割と自分の思ってることをコードで表現したという感じがします。
ZUKAN MUSEUM GINZA powered by 小学館の図鑑NEO
- CD HATA : 音楽の三要素がメロディーとリズムとハーモニーで、音の三要素が、音の大きさと音の高さと音色なんですよね。
- 宮本 : 高さもそんなには選べないというか。これは僕のよくわかんない特殊な能力かもしれないですけど。例えば、この音とこの音と...を同時に流したらどんな感じの和音になるっていうとき、ドレミソって音があったら、ドとレのぶつかり具合とドとミのぶつかり具合...それぞれのぶつかり、それぞれがどれくらい協和してどのくらい不協和なのかっていうのをなんとなく頭で鳴らすことができる。それを基にこういう音のセット、ドレミソラシを選びます、みたいなときに、タイミングでランダムに鳴って重なったりバラバラになったりしたときに、どんな音像になるかがなんとなくわかるんです。あとはオクターブ違いがあったりするぐらい。だからピッチもめちゃめちゃなんでもかんでもにはわざとしてない。自分がわかる範囲で「いいな」と思うものを作ってます。このプリセットだったらこのぐらいの範囲のバリエーションが出るだろうみたいな、音の重なり方がだいたいイメージがつく。
- CD HATA : 意図しない結果になったりするときも?
- 宮本 : ドレミソラシって選んだとして、その中のどの音が出るかはわかんないわけですよ。レが選ばれましたってなって、レの音がどの楽器で鳴るのかもわかんない。シンセベースかもしれないし、カリンバかもしれないし、ピアノかもしれない。結果としてできるものを厳密に想像できるわけではないけど、なんとなくこの組み合わせだと、自分が好きな音になりそうだなっていうのはなんとなくイメージがつく。
- CD HATA : まさにsoundtopeってそういうのを想像しながら作っていくものなんですか?
- 濵野 : soundtopeでこれまでいろんなお仕事をさせていただきました。小学館で、博物館のようなバーチャル博物館のようなものを作るだとか、さっきのオフィスで仕事環境で使うものもありましたし、よみうりランドの屋外でポケモンをテーマにした施設で、屋外の環境音を作るのをやりました。それぞれ求められているものは、かなり違うんです。その中でまず第一はお客様に「どういうものを求められているか」それを前提に、実現するために、音楽の考え方、 音の聞かれ方を想像しながら作る。そのためにいろんな知識、私達の経験を総動員する。プログラムっていうと論理的なものだと思われるかもしれないですけど、宮本くんが言った、作曲の経験だとか自分で書いたりした経験で、わかることってすごいたくさんあるんです。音楽家の経験としてこの音とこの音を並べたらぶつかって濁っちゃうとか、当たり前の部分として体に染み付いているような知識ってたくさんあって、そういったものが実は暗黙のうちに生かされる、最終的に作る音楽生成のプログラムにも反映される。
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- CD HATA : 音楽って理論の中でも「あれが好き」だったり、理論的に「不協」だと言われてることでも響き的に美しいものってあったりする。選択の仕方が人それぞれ、キャラクターが出るって感じなんですかね。 皆さん音大を出てて音楽的な素養も持ってる中でのプログラミングというところにやっぱり意味があるのかな。
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- 森本 : プログラミングって論理の表現なんです。でも論理っていったときに、スプレッドシートを作るわけじゃないから。音楽作るから、表現の対象は音楽の論理なんです。だから音楽の論理が体に染み付いてないと作りようもないんです。でもそれは必ずしも音楽理論の論理じゃなくてもいい。例えば音響学に強い人がエレクトロニックミュージックを作る、そのプログラムを作るっていうのは全然あるわけです。だから何でもいいんですけど、私達は音楽がバックグラウンドなので、そういったものが必然的に入っている。
- 森本 : 11月に、オランダのハーグの知り合いがやってるギャラリーがあって、そこにちょっとした庭があって。ハーグって都市なので、そんなに広いわけじゃないんですけども、植物の実験を続けてる友達がいて、都市でどうやって植物を育てるか。 特に食べられるような植物をどうやって育てるかみたいな実験。縦にいろんな構造を作っていくんですよ。DIYとオープンソースとオルタナティブ的な視点で。オランダって農業大国だし、そういう面白い実験をやってたりするんですよ。大学とかとも連携して。そこで音で何かできないかなと思って。植物の状態をセンシングして。それを可聴化。データを音にするっていうインスタレーションのようなものっていうのかな。
- CD HATA : 植物との対話ですね。
- 森本 : soundtopeの場合は自分の体の持ってる音楽の記憶とかアイディアとかを外部化していくわけですけど、そもそもデータドリブン。外部のダイナミクス、外部の変化を音楽の変化に置き換えるみたいなこともできるわけです。soundtopeで天気の情報を使ったりすることの延長線上。
- 宮本 : いろんなところに行って、その場所の風景とか町とか人の営みとかを見て何か思うことがあったときにそれを音で表現してみたいんです。その場所に即した音楽みたいなものがどんどんできていって。Googleマップにピンを打つように、その場所にいっぱい音楽を置いていって、どんどん世界を征服したら、ある自分から見えてる世界がそこにできるんじゃないかなと。それは作品にできたら面白い。
- CD HATA : 音のジオラマ的な(笑)
- 濵野 : プログラミングのいいところですね、仕組みとして表現するみたいなところがあったんですけど、もう一つ大事なのは、作ったプログラムに他の人が関わることができるというポイントだと思うんですね。 もっと言えば人の輪を広げるというか。 よみうりランドの話で言うと、invisiの米田さんという作曲家の方も一緒に入って音楽を実際に作るっていうことをやっていただいたんですよ。なので、米田さんが使うためのプログラムを提供して、作っていただくっていうのも実はやってて。そうするとプログラムっていう自動作曲とか表現するものを作るっていうだけじゃなく、それをまた他の人が使って、その人なりのまた別のものを作ってもらったりとか。作るっていうこと自体が非常に普遍化していく。会社の野望というか個人的に思ってることとしては、作るってことをもっと当たり前にしていくとか、自動作曲というのはまだまだ広がりは狭いものですので、もっと一般的になっていくと面白い。
- 森本 : 俺もこないだ初めてデモ聞いたんだけど。ほら、録音書き出したやつ。面白いなと思った。ガラスの展示でやったときに、invisiの素材をいただいて。僕がその時はリミックスだとか言ってたけど。soundtopeを使ってリミックスするみたいなことやったんです。それで「そうか、こういう共作のやり方ってあるんだ」と思ってたんです。でそれがもっと推し進められた形で。これはすごい。完成度高いなと。
- 濵野 : 周りの音楽家の方によって、私達の作ったプログラムのより新しい可能性が見えてくるとか。そういうところが面白い!
- CD HATA : 今回のテーマ「プログラミング meets MUSIC」、プログラミングがミュージックにmeetsしていったように、soundtopeなりcoton がまたいろんな人たちにmeetsしていくような感じでいけばいいですね!
今日はcotonのお三方、ありがとうございました。そして、SOUNDABOUTを聞いていただいた皆さんもありがとうございました。次回もお楽しみに!