サウンドデザインと一言でいっても色々なものがあります。
音効、サウンドエフェクト、ゲーム音楽、フォーリーサウンド...etc
それぞれが思うサウンドデザインを語っています。
インビジが音に対して、どういった向き合い方をしているのか?そしてその向かう方向は?
ゲスト : 中村優一、岩田裕大、小田部剛
ファシリテーター : CD HATA
サウンドデザインとは、さまざまなニーズに合ったサウンドトラックを作成するための技術と実践。これには、オーディオ制作技術とツールを使用し聴覚要素を指定、取得、または作成することがあげられる。映画制作、テレビ制作、ビデオゲーム開発、劇場、録音、再生、ライブパフォーマンス、サウンドアート、ポストプロダクション、ラジオ、楽器開発など、さまざまな分野で採用されている。サウンドデザインには通常はメディアへの対応からサウンドエフェクトやダイアログなど、以前に作成または録音されたオーディオの実践(例:フォーリーサウンド参照)があげられる。サウンドデザインを実践する者をサウンドデザイナーという。 - wikipedia
- 中村 : インビジに入って効果音、放置音、サウンドロゴ(CI)を作るようになって初めて意識しました。
- 岩田 : 前職で映像の仕事をしていたので、音効さんやサウンドデザイナーの方々とやりとりすることはありましたが、自分で実際にサウンドデザインをしたっていうのは、インビジに入ってからで、某消臭剤のCMで、松岡修造さんが登場するときに「神々しい」1秒か2秒くらいの音をつける、というのが一番最初の仕事でした。
ファブリーズ新CM『秋のジメジメ注意報』篇
- CD HATA : 「神々しい」というイメージを音に落とし込むっていうのがサウンドデザイン?
- 岩田 : たとえば川の流れてる映像があるとすると、映像にあわせた音を当てることもできるけど、実際の見た感じよりも水量が多そうだったり、流れが急そうな音を当てて、体験を拡張することができる。映画『スター・ウォーズ』のライトセーバーの音なんかはまさにそれやってますよね。世界観を広げてる。
- 小田部 : 「フォーリーサウンド」ていうのは入社してから知りましたが、サウンドデザインという言葉は学生の頃から知ってました。当時、ガジェット楽器を作っていて、どういう音を出したら美味しそうに感じるかなというのを色々試したんですけど、シズル感を表現するとか、音から伝わる感情をクリエイトする、それがサウンドデザインかなと思ってました。
フォーリーサウンド - wikipedia
ガジェット系楽器専門のオンライン・ショップ
- CD HATA : まず最初にリアルな音を採る、それがファーストステップ。でもそれで足りないと誇張して作ったりしますよね。
- 中村 : 誇張して作った例としては、最近、肩コリの音っていうのを作ったんですけど、石どうしがぶつかる音とか、木がメキメキ折れる音を録ってピッチを調整して使っています。
- 岩田 : リアルな音って実は我々そんなに差別化できないんですよね。アニメの影響なんかもあるんですかね。アニメの音ってかなり派手な音当ててますよね。
肩バキ動画 「対面による緊張と肉体労働でゴッッリゴリ」篇
- CD HATA : 自分の声を録音した音っていやじゃなかったですか?でも年と共にそうでもなくなってきてません?
- 中村 : 慣れですかね。我々仕事柄いやってほど録音しますもんね。自分の声。
- 岩田 : 小田部くんとPOLAの「Voice makeup spheres」という仕事をして女性の声をたくさん収録したんですけど、日本人の女性は特に自分の声が嫌いっていうデータがあるんですよ。女性の社会進出と関係しているとかあるみたいですね。
Voice makeup spheres
日本人女性の声は、なぜこうも「高音」なのか
- CD HATA : 音ひとつ聞いても人によって感じ方ってそれぞれですよね。
- 小田部 : 音も個人の経験に紐づくから。
- 中村 : 耳の形状も人それぞれですし。
- 岩田 : 体型によっても違いますよね。やっぱ肉が共振してる感じしますね。昔と比べて(笑)
- 中村 : 配置大事ですよね。機材選択はもちろんだけど、配置などについても最初から関わらせてもらえると違います。
- 小田部 : ピアニストの原摩利彦さんのお寺でのライブに行ったんですが、普段お経とか詠んでる場所にタグチの全方位スピーカーがついてて、残響が残るかんじになっていて、音が降り注ぐ、包まれる感じがとても幸せな音場でした。
- 岩田 : 教会ってよく考えて作られてますよね。天井が高いってだけでなく。ローマに住んでいたことがあって、ヴァチカンのサン・ピエトロ大聖堂の音響にはえらく感動しました。聖歌隊の声が降り注ぐかんじ。これはみんなキリスト教徒になるわ。と思いました。
サン・ピエトロ大聖堂
- CD HATA : ジャマイカ行ってレゲエ、アメリカのハイウェイでアメリカン・ロック、日本海で演歌、っていうようにその風土で生まれた音楽って、その場で聞くことで「そういうことか!」って思いますね。
- 中村 : 放置音とか作るとき、国民性で捉え方が違うだろうなって思うことあります。例えば、正解したときの「ピンポーン!」って外国の人には通じない、って聞いたことあります。刷り込みなんでしょうね。
- CD HATA : 後天的なのか先天的なのかってありますね。コオロギの音とか。日本人とポリネシア人以外にはホワイトノイズでしかないみたいな。
虫の音を「虫の声」として認識できるのは日本人とポリネシア人だけ
- CD HATA : 教会じゃないけど音の影響力ってすごいですよね。ヒットラーとか。
- 小田部 : 聴覚ってふさげなくて反射とすごく結びつくから、怖い音って刷り込んでおくと条件反射的に怖い。
- 岩田 : もともと危険を察知できるから聴覚は開いてるんですよね。
- CD HATA : 耳から聞こえてくる情報って改めて大きいですよね。そこをデザインしていくという立場で、どんな心構えで目指していけばいいでしょう。
- 中村 : インビジでは、放置音の仕事もよくいただくんですが、公共の施設で使用する音となると、気持ちいい音っていうだけでなく機能を持たせることが大事ですね。
- CD HATA : 「すべての武器を楽器に」って喜納昌吉さんが言ってますが、サウンドデザインって悪用もできるけど、世の中が良くなっていくデザインをしていきたいですよね。
- 岩田 : プロダクトデザイナーの深澤直人さんの「考えない、WITHOUT THOUGHT」がデザインの本質っていう考え方にすごく共感するんですけど、いざ音に当てはめるとそれだけだと難しくて、「予定調和感」と「違和感」みたいなもののバランスが大事なのかなと思います。
- 小田部 : WITHOUT THOUGHTってのはアフォーダンスがしっかり成り立つことが前提ですね。
- 中村 : 音つければいいってわけじゃなくて、「音をつけない」というデザインも大事かな。音を扱うプロとしてそこの判断をしていきたいですね。