みなさんは、マスキングという言葉を聞いたことはありますか?
英語のmaskingには「覆い隠すこと・包み込むこと」という意味がありますが、音楽業界では、マスキングという言葉は、「ある音が別の音によって掻き消される現象のこと」を指します。
異なる二つの音波が同時に耳に届くとき、弱い音波は強い音波に打ち消されてしまうのです。
みなさんの中にも、ご自宅でエアコンのスイッチを切ったら、それまでは聴こえていなかった冷蔵庫の音が急に気になってきてしまった…!といった経験がある方がいらっしゃるのではないでしょうか?この現象こそが「マスキング」なのです。
この場合、もともと冷蔵庫の音も鳴っているのですが、冷蔵庫の音よりもエアコンの音の方が音波が強く、つまりマスキングが起こっているので、エアコンがついている間は冷蔵庫の音のことはほとんど気になりません。エアコンを切ったことで、マスク(遮蔽)していたものが無くなり、途端に冷蔵庫の音が聴こえてくるように感じるのです。
実は、わたしたちの生活の中には、音によるマスキングの効果を利用している場所がたくさんあります。共通する周波数帯の音を意図的に干渉させることで、お互いの音を聴こえにくくさせているのです。例えば、喫茶店です。
喫茶店では、BGMがマスキングの役割を果たしています。BGMを流すことによって、お客さん同士の会話を他のお客さんに聞き取りにくくさせているのです。
他にも、音のマスキング効果を利用した商品としてTOTO社の「音姫」やLIXIL社の「サウンドデコレーター」などのトイレ用擬音装置があります。
多くの人が利用するトイレを使うとき、どうしても用を足す音が気になってしまうことはありませんか?
トイレ用擬音装置は、トイレ使用中に川のせせらぎのような音を発生させる機械です。排泄音に近い帯域の音で排泄音をマスキングしてカモフラージュすることで、利用者は排泄音を気にせずに快適にトイレを利用することができるのです。
このように、わたしたちは普段の生活の中で知らず知らずのうちに音のマスキングによる恩恵を受けていることがわかります。
普段は気にも留めないようなことでも、その仕組みや効果を知ることで、いつもの景色が一味違って見えるようになるかもしれません。
是非みなさんも、身の回りの「音」の背景にある工夫を探してみてくださいね。