みなさんは「マスタリング」という音楽用語をご存知でしょうか?
言葉を聞いたことあるという方の中にも、「ミックスとマスタリングって、何が違うの?」
「ミックスだけでもいいんじゃないの?」
と疑問に感じている方はいらっしゃるのではないかと思います。
実は、ミックスとマスタリングは、似ているようでまったく異なる工程なのです。
今回の音コラムでは、音源をリリースする上で避けては通れない「マスタリング」について特集します。
マスタリング(mastering)という言葉には、次の2つの意味があります。
①さまざまな素材、内容を記録媒体(CD、DVD、Blu-ray Disc、LPレコード、ビデオテープなど)に収録し、量産用プレスをする際のマスター(原盤)を作成する作業。これは音楽に限らずコンピュータゲームやパソコン用ソフト、データを収録したCD-ROMやDVD-ROMやBD-ROMの他、DVD-Video、DVD-Audio等のメディアの種類を問わず原盤を作成することを意味する。原盤製作作業。
②録音による音楽作品制作において、ミキシングして作られた2トラック音源(トラックダウン音源、または2ミックス音源)を、イコライザーとコンプレッサー、その他のオーディオ・エフェクト機器を用いて加工し、CDやDVDやBD、インターネット上の投稿サイトといった最終的なメディアに書き出すために、音量や音質、音圧を調整すること。最近は映像作品の画質の調整にも用いられる。
(出典:Wikipedeia)
音楽用語で使われる場合は、「マスタリング」というと②を指すことが多いです。
では、マスタリングの工程は、音源制作においてどのタイミングで行われているのでしょうか。
早速、音源を制作するときの流れについて見ていきましょう。
わたしたちが普段耳にする音源は、一般的に次のような流れで制作されています。
まず、どんな楽曲であっても「作曲」と「編曲」をするところから始まります。
作曲の工程では、メインとなるメロディやコード進行を作って曲の骨組みを決め、編曲の工程では、そのほかのメロディ作りやコード進行のリハーモナイズを行って曲の肉付けや印象決めをします。
次に、生音が必要な場合は、「レコーディング」という工程で音の収録をします。
どのマイクで、どのようなセッティングで録るのかが非常に重要になってきます。
曲を作る上で必要な素材が揃ったら、「ミックスダウン」という工程で個々のパートや楽器をひとつの音源としてまとめ上げます。この工程では、それぞれのパートの音のボリュームや音質を調整します。調整が終わったすべてのパートをひとつにまとめて書き出した音源データのことを「2mix」と呼びます。
そして最後に、冒頭で説明した「マスタリング」の工程があります。
繰り返しになりますが、マスタリングとは、最終的にその曲を収録する媒体に適するように、2mixの音量や音質、音圧を調整する作業のことです。
例えば、同じ2mixであっても、CD収録に適したマスタリングとYoutubeに適したマスタリングは異なります。
つまりマスタリングは、リリースしたい媒体で最も聴きやすいように音源を最終調整するために非常に重要な役割を担っているのです。
より理解しやすいように、音源制作を「料理」に置き換えて考えてみましょう。
音源制作の各工程を料理に例えると 作曲・編曲までが「レシピ作り」
レコーディングが「材料集め」
ミックスダウンが「味の調整」や「調理」
そしてマスタリングはできあがった料理の「盛り付け」に当たります。
身近な作業に置き換えると、各工程がそれぞれ大切な役目を果たしていることがより理解できますね。
では、マスタリングの工程では具体的にどのような作業が行われているのでしょうか。
大きく次の3つの工程があります。
一つ目は、「聴こえ方の最終調整」
二つ目は、「リリースのためのファイル形式に整える作業」
そして、三つ目は、「曲間を決める作業」です。
一つ目の「聴こえ方の最終調整」の工程では、2mixの音響を調整する作業が行われます。
具体的には、主にEQ(イコライザー)やコンプレッサー、ステレオエンハンサーと呼ばれるエフェクターを使って音の聴こえ方や音の広がりを調整した後、リミッターと呼ばれるエフェクターを使って音圧を適正なレベルに調整します。
聴こえ方の最終調整が完了したら、二つ目の「リリースのためのファイル形式に整える作業」が行われます。
この工程では、最終的に出力するメディア(CDやLP、Youtubeなど)のフォーマットに適合するように音源のサンプリングレートやビット数を変換します。
ビットレートを変換する過程では、データの欠損によるエラー(ノイズの発生)が起こってしまうことがあるため、それを防ぐためのディザリングと呼ばれる作業が行われることもあります。
そして、最後に三つ目の「曲間を決める作業」が行われます。
曲が切り替わる際の間(ま)をどのくらいにしたいかを決定し、できあがった音源の冒頭と末尾に無音(スペース)を挿入します。
この工程があることで、アルバムやEPの「流れ」や楽曲の持つ「余韻」を演出することができるのです。
わたしたちが耳にする音源は、非常に複雑な工程を経てはじめてわたしたちの元へ届いているということがわかりました。
それでは最後に、実際に2mixの音源とマスタリング後の音源を聴き比べてみましょう!
今回は、フジロックにも出演しているアーティスト
『Dachambo』 の楽曲「Never Ever Breaking Down」の音源をお借りしています。
Dachambo「Never Ever Breaking Down」より一部抜粋
2mixとマスタリング後の音源を実際に聴き比べてみると、音の迫力や広がりに違いがあり、マスタリングの効果を感じることができますね。
Dachambo「Never Ever Breaking Down」の全編は、 こちらのリンク 「https://linkco.re/E6GP8rqv」から聴くことができます。
是非チェックしてみてください!
今回の音コラムで、みなさんが普段聴いている音楽が、たくさんの人が関わってたくさんの工程を経て届いているのだということがお伝えできていれば幸いです。
是非、気が向いたら音源制作の裏側にも思いを馳せながら音楽を聴いてみてくださいね!